2017年11月 6日 (月)

【発表】「もうすぐオトナの超短編」松本楽志選

◆◆◆作品発表

 「もうすぐオトナの超短編」松本楽志選の結果を発表します。

 最優秀賞・優秀作品・佳作の本文は、後日、フリーペーパー「コトリの宮殿」に掲載します。フリーペーパーを手に入れにくいひとのためには、大きめの画像をブログに掲載いたしますので、いましばらくお待ちください。
  また、最優秀賞・優秀作品・佳作を収録した作品集を、2018年に電子書籍として出版予定です。そちらもご期待ください(作者の方々へは編集開始前にまたご相談申し上げます)。
 それでは作品の発表です。松本楽志による評も掲載しておりますので合わせてどうぞ。


☆最優秀作品
『彼女、トラック、遙か彼方の大河』   ZZ・倶舎那

◎優秀作品
『番外地』   海音寺ジョー
『CALL』   佐多椋

○佳作
『小鳥』   藤森 伏見
『色彩』   タキガワ
『クリームソーダ』   穂坂コウジ

※募集は兼題部門と自由題部門に分かれておりましたが、選は各部門を区別することなく行われています。御了承ください。


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『ライン』   葉原あきよ
> 「あ、ライン来たよ」

【評】天から降りてくる紐はいつでも異界へのあこがれをともないます。「蜘蛛の糸」で亡者たちが糸にむらがったのは、生への執着なのでしょうか。もしかしたら、ただ見知らぬ景色を見てみたいという本能だけが彼らを突き動かしたのかも知れませんよ。テーマが現代的で軽い口調で書かれていますが、各要素がおさまるところにおさまっていて非常によくできていると思います。

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○『小鳥』   藤森 伏見
> その小さな部屋の中には白い洋服を着た人形がいて。

【評】鳥籠のことをよく考えます。捕らわれた生き物はそこが世界の全てです。しかし、鳥籠には隙間があって、世界はどこかへゆるやかに繋がっている。鳥籠にはそんな不安定さを常に抱えているせいでしょう、超短編ではたびたびとても効果的に使われています。このお話の語り手はゆるやかに広がっている外側の世界にあって、その世界について何も描写はしません。捕らわれた生き物、いや、それすら危ういのですが、その生き物だけに捕らわれていて、これはどちらが内か外かわからなくなります。世界の終わらせ方も見事です。

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『雨の旅』   ZZ・倶舎那
> 旅に出るたびに雨がついてくる。

【評】異世界はひとつの場所に留まっている必要はありません。 私たちが人生の旅人であるという表現はもはや手垢にまみれすぎて、あえて口にすることは何か特別な覚悟が居るのではないかとおもいますが、だからといってその事実が消えてなくなったわけではなく、私たちはやはり旅人であったのです。そして、そういった視点人物の人生(時間や場所)によりそうような異世界がここには描かれている。近くにある、遠くにある。届きそうで届かないもどかしさの世界が、雨のもつ質的なあるいは視覚的な要素として、丁寧に取り出されている作品です。


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☆『彼女、トラック、遙か彼方の大河』   ZZ・倶舎那
> 助手席に置かれた等身大のスティッチのぬいぐるみ。彼女はそれを相棒と呼ぶ。

【評】日常のスケッチをラストの1行で異世界に接続することに成功した見事な作品です。ぬいぐるみは異世界そのものであるということを看破したところも素晴らしい。わたしたちがぬいぐるみを見る時、そこには、そのぬいぐるみが表出しているものを、逆再生としてあたまに取り出します。それは動物であるかも知れないし、人間であるかも知れないし、ロボットであるかも知れない。しかし、確かに何らかの主体を持つ存在であることが殆どです。そういったものが、虚空にただそれだけで存在することを想像するのはかえってって難しいでしょう。主体は、そこでたしかに息づいていることを、われわれは無条件に想像します。彼らが息づいているのは、彼方の大陸を流れる大河かもしれない、プリズムの光を乱反射する孤独な惑星かもしれない、無数の破れ障子に何重にも囲まれた四畳間かもしれません。それはたしかにトラックのなかに、かすかな消息として届いているのです。異世界を渡り歩くトラックを題材としたところも、効いています。

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『灯火ひとつ』   白縫いさや
> 六角形の閲覧室で本を読む。この図書館にはありとあらゆる書物が収蔵されている。

【評】書物が異世界の消息であることはこれはもう疑いようがありませんが、意外にも書物から消息を感じ取ろうとした作品はあまり多くありませんでした。もしかしたら、凡庸を怖れたのかも知れません。この作品はそこに果敢に挑戦し、成果を収めているように思います。猿の無限のタイピングが、いつかシェイクスピアに着弾するかのように、無限の物語はどこかで無限の世界を記述します。私たちが書物と向き合うことは、もしかしたら、無限の世界の一部を、偶然、ほんとうに偶然に、掠めることだったのかも知れません。

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『あの夜の私』   寺家莉冥
> 今宵は地元集落の祭事。毎年、お盆に催される夏祭り。

【評】先の作品への評で本について書いたように、祭がまつろわぬ者たちとの交信の場であることも、また疑いようがありません。そして、私たちが祭のことを思い出すとき、なぜか私たちは場所だけではなく、時間も同時に飛び越えていきます。時間も場所も異なる記憶はもはやこの世界と地続きであるかどうかも疑わしく、わたしたちはもうとっくに異世界のことを記述しているのです。じっさい、祭りのことを語るとき、私たちは言いようもない孤独感をどこかに感じるのではありませんか?

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『しゃぼん玉』   氷砂糖
> 甥にせがまれて洗剤を水で割る。

【評】しゃぼん玉は不安定な存在でありながら、明確に内と外を持ちます。これは鳥籠と良く似ていますね。しかし、鳥籠と決定的に違うのは、しゃぼん玉がその存在に破滅を内包して生まれ落ちるところです。最後の一センテンスが見事で、ここで語り手はしゃぼん玉が割れたあとの世界に「戻れなかった」と明言しています。世界は既に壊れて新しいものになっている。しゃぼん玉を描写していることが世界を描写していることと見事に響き合っている作品だと思います。

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『申く◇U王土ルL』   穂坂コウジ
> こんにちは。そう、そこのあなた。あなたの事です。

【評】おっと、ついにバレてしまいました。超短編がなんらかの物語である以上、超短編を読むことはすでに異世界を覗き込むことです。いや、バレてしまいましたというよりも、もうとっくにご存じだったことでしたね。でも、精緻に描写された異世界もあれば、ほとんどはりぼてにすぎない異世界もあります。この作品によって読み解かれる異世界は、記号的な漢字によってその端っこだけが記述されています。お見事です。そうでした、またうっかりしていましたが、はじめから超短編は端っこだけを食べることを得意とするジャンルなのでした。もう申く◇Uルされましたか?

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『あなたと出会った場所』   はやみかつとし
> ありとあらゆる行き違いを繰り返しながら、あなたとわたしはそのたびにどうしても出会ってしまう。

【評】ただ、「わたしたちが繰り返し衝突するのだ」ということだけを全力で伝えてくる力強い作品です。 わたしたちはよく鏡の世界を想像しますね。鏡の世界は「通信ではない」。そのとおりです。では、通信ではない私たちは何を交換しうるのでしょうか。それこそが物語として記述されているのです、限りなくゼロに近いけどゼロではないのです。異世界との交信というものはそういう形でしか起きえないのかも知れません。


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◎『番外地』   海音寺ジョー
> 重い、吐き出し窓を開けると便臭がする。

【評】お祭りの超短編がありました。猫の超短編がありました。死んだ恋人の超短編もあります。いずれも過去に向かって異世界の消息を辿るたびでした。しかし、異世界は未来にもあります。一寸先は闇、未来は渦巻く世界の中に無数の異世界を溶かし込んだ形で存在します。この作品全体に漂う、悪臭のようなものは、この未来を端的に表現した者と感じます。老人たちは未来の異世界からやってきて、その世界の言葉を17文字だけこの世界に伝えて、そのあとは沈黙してしまう存在なのです。

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『あらかじめ決められた恋人たちに』   空虹桜
> 彼女が、妻が、死んだ。

【評】小説の分類タグのひとつに「ループもの」というものがあります。ループのきっかけは様々です。何ら脈絡もなく特定の日々が繰り返される作品もあれば、恣意的に何か後悔した行為をくりかえし体験する作品もあります。たいていは、ループのなかでひとびとは行動を変え、世界を変えます。ループだからといって単に同じことを記述していては小説になりませんからね。しかし、記憶もまた小説と似ています。わたしたちは同じこと完全に同じまま頭に仕舞っておくことは出来ません。反芻するたびに少しだけ、わずかだけ形を変えて世界は繰り返されます。この作品もまた、過去という異世界との通信を描いた作品といえるます。

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『しっぽ』   五十嵐彪太
> 飼い猫の姿が見えない。たぶんクローゼットの中で丸まって寝ているんだろう。

【評】猫にはどこか時間を操る力でもあるんじゃないか、と思いませんか? このイメージはおそらくですが『夏への扉』のせいでしょうか。あの人間と明らかに異なる時間の流れをすごしている様子を見れば、自然とそのイメージが湧くのも納得できる気がしませんか。そして本作もまた、過去にある異世界が、現在に射影されてしまったかのような作品で、それを猫の尻尾で表現したところが秀逸です。


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『ドア』   胡乱舎猫支店
> 母さんが階段を上って来る。足音を忍ばせているけれどハンドクリームの匂いがする。

【評】これもまた猫をテーマにした超短編です。おまけにドア(=扉)ですから、これはもうどうやっても『夏への扉」を思い出さずには居られません。扉が文字通り異世界への扉になるというのも非常に腑に落ちる話です。猫は過去の世界の残滓をかすかにまとって(それがちゃんと匂いとして表現されています)現れます。そして、もちろん、このドアは開きません。異世界が魅力的なのは、それが完全なものとして立ち現れてこないからです。

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『森』   千百十一
> 生まれも育ちも歌舞伎町である。

【評】『カラスの教科書』はカラスの生態もさることながら、作者のカラス愛を感じ取ることが出来るよい科学読み物でしたが、それはさておき、これを超短編の作品の末尾に「参考文献」と加えたことこそがこの作品の特異性と面白さに繋がっています。この参考文献の一行は「この作品の、一人称の主体はカラスですよ」ということをただ説明したかっただけ、と読めてしまうのですが、実はこの一文の効果はそれだけではありません。この作品全体をものすごい力で現世界にむかってつなぎ止める、重い碇のような力がこの注釈にはあるのです。これがなくなると本文はふらふらと何処かここではない世界に向かって漂流していってしまう。これはとりもなおさず、さかさまに本文の異世界性を表しているといえるのではないでしょうか。

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『こっちの水』   元木一人
> 雨を飲むために寝転がっていたら、向こうでぴしゃぴしゃと魚の跳ねる音がした。

【評】歌舞伎町の次は四谷三丁目です。具体的な地名が、いま私たちがいる「こっちの世界」の輪郭を濃くします。輪郭が濃くなればなるほど、そこからはみだした、淡い、ただ気配だけの存在はかえって目立つようになります。俗物的な女への感情もまた、その淡さを強調しているかのようです。世界は輪郭の内側にあるのか、外側にあるのか。この作品はてのひら怪談のような趣がありますが、そういった淡い輪郭の得体の知れない者の揺曳が私たちの心を少しだけ不安にさせるのかも知れません。


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◎『CALL』   佐多椋
> 一ヶ月ほど前のことだ。

【評】語り手は自らの存在について「社会的な存在意義を匂わせつつも、社会的であるとはけっして明示しないことで、社会的以上にもっと本質的なところで存在意義を脅かさている者」として記述されます。語り手の物理的存在の消滅という拡大解釈は、そのままこの世界の破壊と結びつきます。作中で語り手が向き合っている「スクリプト」は、実行されることで、コンピュータメモリ上に小さな異世界を構築し、そこで作り手の望む何かを生成する存在として規定されています。語り手はその別の世界を壊すことで、語り手の居る外の世界がゆるやかに崩壊することを防ごうとしてます。しかし、外の世界もまたすでに変容していました。語り手が社会的な拠り所としている組織体それ自体ををあらわす蛍光色、その色によって染められた世界にです。もしかしたら、語り手が自らの消滅を確信した時点で既に世界は変容していたのかも知れません。なかなかに面白い構図だと思います。

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○『色彩』   タキガワ
> ジョリィは嘘ばかり吐く少女だった。

【評】ここにもまた旅人が描かれています。面白いのは、この旅人は異世界の消息を伝える者ではなく、ジョリィが作り出す異世界を破壊する主体であることです。この華麗なる逆転は、作中ではさほど大袈裟には語られませんが、とても面白いと思います。ジョリィが時計台に住んでいるというところも見逃してはいけないでしょう。時計台は時間の象徴です。他の作品でも書かれていたように、過去もまた異世界でありますが、未来は旅人によって破壊されてしまい、最後の一行からこの物語自体をひとつの過去としてかろうじて締めくくることしかジョリィには出来なくなっています。

○『クリームソーダ』   穂坂コウジ
> アシカの檻の前にいた。

【評】確か、だいぶまえに鳥かごの話をしましたね。動物園の檻もまた同じことです。ただ、動物園が人工的に動物たちの生活環境を作っていることは、檻ごとに異世界が創造され、動物とともに陳列されていることは看過できません。本来ならば檻によって隔てられた二つの世界は実は、目に見える折という境界線ではなく、もっと別の次元にひかれた分水嶺によって隔てられているのだということに気づいてしまうと、ちょっと怖い気がします。

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『夏の博物館』   海音寺ジョー
> たきさんと京都国立博物館に「博物館のおさかな展」を観に行く。

【評】芸術品がどこかゆがめられた異世界への入り口であるならば、博物館というのは入り口をコレクションしている場所ともいえます。しかし、特別展示はまだいいのです。見ている側にも覚悟がある。実際、この語り手はたきさんの様子を描写する余裕があります。そのディテールがむしろ「こちら側」を強く意識させます。いっぽうで、最後の一行にある「常設展」は恐ろしい存在です。「常」という名前に油断してまるでそこが日常の延長戦であるような気持ちで世界に接してしまうと、思わぬところからあちら側へ転落します。ほら、この作品も最後になって「仏像を観た」と、慌てて世界を閉じてしまった。たきさんのとの他愛のない会話に代表される日常性は完全に失われて二度と戻っては来ません。

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『告白』   はやみかつとし
> この厚い岩盤の天井を穿ち、孔を開けたのがあなたの涙だったとしたら、

【評】わたしがあなたでありあなたがわたしであるという物語の原型をあてはめるのであれば、この作品は異世界から穿たれた穴は、じつはこちらがわであって、なんの消息も伝えてきてはいないということになります。一条の光、というのはほとんどのばあい、希望の象徴ですが、もしかしたら、語り手はその欺瞞にうすうす気が付いていたのではないでしょうか? 

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『痛みを育てる』   たなかなつみ
> 痛みは遠いところからやってきて、やがて内奥で巣を作る。

【評】痛みはどこからやってくるのでしょう。語り手は、中に巣くってしまった痛みに気を取られ、痛みの生まれ故郷である世界のことを考えることを放棄しています。わたしたちの内部と外部を分けるのは、内部に痛みがあって外に痛みはないからで、その境界線があって初めてわたしたちはいるんだ、という一応の説明はつきます。しかし、よくよく思い返してみると「痛みは遠いところからやって」きているのです。では、こことあちらの境界をどう定めればいいのでしょうか。これは厄介な話です。

2017年7月30日 (日)

【結果発表】ガリレオ・ホラー超短編

■■ガリレオ・ホラー超短編の選考結果を発表します。

  選考はガリレオ社長、白縫いさや、タカスギシンタロの三人が行いました。各自、最優秀作品◎1、優秀作品○4、佳作△3作品を選び、最優秀作品を各選者賞としました。また、◎3点、○2点、△1点で計算し、合計得点の一番多い作品をイベント大賞としました。


■大賞:『ショートケーキ』  五十嵐彪太 (社長○いさや○シンタロ◎計7点)

■ガリレオ社長賞:『海の見える丘の家』  胡乱舎猫支店

■白縫いさや賞:『いこくのち』   加楽幽明

■タカスギシンタロ賞:『ショートケーキ』  五十嵐彪太


  受賞者のみなさまおめでとうございます。大賞作品はガリレオ新聞に掲載されます。大賞作品、各選者賞作品はのちほどガリレオHPかこのブログで読めるようにいたしますので、少々お待ちください。

以下に、各選者による全作品評を掲載します。また、選考の点数とは関係ないのですが、ゲスト選者として店員Sさんにも参加していただきました。

(社)……ガリレオ社長
(白)……白縫いさや
(シ)……タカスギシンタロ
(S)……店員S

『嗤—わらう—』   寺家莉冥
 > 高校の帰り、少女は静謐な畦道をひとりで歩いていた。

・処刑された人間のような案山子。その憑依は、主人公が心の奥底で案山子と自分自身を重ねてしまったせいではなかろうか。だとすればラストで腹をかかえて笑いころげる主人公の姿がよけいにつらく怖い。○(シ)
・最後だけ「笑」なのが面白いなあと思いつつ、しかし「嗤」になるのも時間の問題なのかもしれないと予感しました。いつ、何がきっかけでそうなるのか。想像が膨らみます。○(白)
・正統派の和風ホラーですね。なんだかんだ最後の老婆が一番怖い思いをさせられているような……。(社)
・導入がとてもいいですね。もうこれだけで怖い。それから少女に赤色 というところがとても印象的であとに怖さを曳いているような感じがします。(S)

『渡していいものか』   明利英司
 > 台所の床で横たわっていた妻が、むっくりと上半身を起こす。

・妻ははたして台所で起こったことを覚えているのか否か……。「分からない」という恐怖がじわじわと迫ってきます。△(シ)
・渡していいものかと問われればどう見てもNOなわけですが、それでも迷うのは彼個人の気質なのか、彼女の気迫なのか。ホラーというよりはサスペンスという印象が拭いきれません。(白)
・奥さ んにいったい何が起きたのか……旦那さんと一緒に悩んでしまいました。でも包丁を渡すと確実にバッドエンドかと。○(社)
・妻の飄々としたところが怖さを醸し出していますね。円環的な要素もあり、読み終えて初めに戻ると、こんどは夫が怖い。二重におそろしい……。(S)

『白い!』   氷砂糖
 > 一時間後の締め切りに間に合う気がせず、カンヅメ用の部屋を融通してもらう。

・すべての物書きが恐怖する書いても書いても消えるテキストの悪夢。「白」の描写を重ねることで不穏な雰囲気へと誘導する手腕が見事です。白→無(→死)という静かな恐怖にぞくっとしました。○(シ)
・怖いといえば怖いのでしょうが、そもそも自業自得のような。(白)
・SF的な面白さですね。ていうか、書いた文章が消えちゃうの、ちょー怖い……(←しがない物書きのトラウマ)△(社)
・時間の書き込みスピード感を生んで、スラップスティックな笑い、いや怖さを……。ごめんなさい、ふつうに笑いました。(S)

『ショートケーキ』 五十嵐彪太
 > もう何年も、美しいままのショートケーキを見ていない。

・美しく整ったショートケーキが破壊されることの恐ろしさ。まったく肉体的な描写がないにもかかわらず、人体の損傷を連想してしまいます。そしてほのかにエロい。◎(シ)
・かなしい、あるいは愛しいお話だなあ、という印象です。怖いと形容する気にならないのは、夢中でケーキの残骸をほじくる二人が幸せそうに見えるからですね。○(白)
・ぞくりとする怖さ。狂ってる夫婦だけど、現実にこういう人いそうですね。ケーキ屋さんもまさかこんな食べ方をされているとは思うまい……。○(社)
・ケーキの描写が猟奇的殺人現場みたいで素晴らしい。絵や映像には不可能な、小説ならではの怖さの体現だと思いました。(S)

『わずかな明日への期待』   空虹桜
 > 今ならまだ間に合う。あなたはこれを読んではいけない人です。

・この短さで過去改変ものに挑んでいてすばらしい。しかしやめろと言われれば言われるほど超短編を書きたくなってしまう。こわい。(シ)
・だが断る。この白縫いさやが最も好きな事のひとつはお願いと懇願してくるやつに「NO」と断ってやる事だ。と、脳内で即座に再生されてしまいました。おそろしい。(白)
・未来でいったい何が起きたのか? 超短編が引き起こすかもしれない悲劇、という設定に心惹かれます。(社)
・読み手が宙ぶらりんにされる感じがいいですね。法律の施行というひとつ具体的なことが示されるのも、かえって不安感を底上げしていると思います。(S)

『ガケ鬼』   穂坂コウジ
 > ーー鬼が、迫ってくる。

・振り返ると突然断崖絶壁が現れる鬼ごっこ。奇想天外なアイデアにもかかわらずビジュアルがばっちり浮かんできてすごい。△(シ)
・まさに因果応報。後悔と恐怖がないまぜになって迫る構成が巧みです。○(白)
・まさに因果応報ですね。つい遼君視点で読んでしまって、ザマァの爽快感を感じました。(社)

『澱みに浮かぶ』   海音寺ジョー
 > 円盤型のロボット掃除機が、台所の時間塊を吸いこんだ。

・「時間塊」といういくらでも広げられそうなアイデアを、わずか400文字少々で終わられてしまうぜいたくな作品。(シ)
・SF的なギミックが恐怖を理性的なものにしてしまっているように思います。(白)
・SF的なホラー、浦島太郎ですね。掃除機とかカレーとか、小道具のおかげで臨場感があってオチが綺麗で面白かったです。○(社)
・円盤型のロボット掃除機とはつまり現代風にいえばUFOで、キャトルミューティレーション的な説話なのでしょうか。と、思わず想像してしまうような説話が説話を呼ぶ入れ子式の構造。で、ありながら玄関に辿りつかない、昔話や都市伝説より妙に生々しい……。(S)

『海の見える丘の家』   胡乱舎猫支店
 > 海が見える高台に住むのが夢だった。

・説明を省略しているにもかかわらず、複雑な人間関係をそれとなく理解させる表現力がすばらしい。(シ)
・こちらも五十嵐作品同様、怖いというよりは味わい深いですね。若い愛人の本当の顔を知っているのは語り手だけのようです。世間からどう非難されようと、こんな時間を過ごしたかった、というような。△(白)
・ものすごく怖いシチュエーションにも拘わらず、飄々とした主人公とのギャップが面白いです。◎(社長)
・わたし個人の概観として優れた小説には世界の秘密のようなものが作者の意図を離れてそれとなく書かれてしまうものだと思っているのですが、これにはそういう何かを感じた。そういう何かをまえにすると、ただただ「美しい」以外の言葉が出てこなくなるのです。(S)

『夏のおもいで』   胡乱舎猫支店
 > 「甲虫の匂いがする。甘酸っぱいおが屑の匂いが」

・ラスト三行で、それまで構築してきた物語世界そのものを一気に不安定化させる大胆な構成。悪夢のようなおそろしさ。○(シ)
・道理の通らない事象の数々を、「夏のおもいで」という言葉でベールの掛けるそのやり方が個人的には非常に好みです。まるで夢の中のような。△(白)
・突然異世界召喚されたかのような不思議ワールド。主人公も甲虫を探して森へ旅立ってしまうのか……。(社)
・なんでしょう、世界の秘密というものは、たとえば空と海の交わるところ、すなわち水平線のように人間には辿り着けない場所にあるのだと思うのですが、この小説には、そんなゆけるはずのない水平線の向こう側へいってしまうような異常なちからを感じました。そして読み終えてタイトルが素晴らしい。(S)

『悪いバイト』   だんぞう
 > 先輩が突然、胸を押さえて膝から崩れ落ちた。それを合図に僕らも皆一緒に倒れる。

・子どものころみた仮面ライダーショーは、ショーだと分かってはいても、どこかで本当にショッカーの世界に通じているようで怖かった。本作は異世界への入口としてのヒーローショーに着目ししていて共感した。△(シ)
・言葉は呪いで、そのことが端的に表れていて良いですね。個人的な趣味になってしまいますが、最後2行は冗長だったなぁと思います。△(白)
・いったいこの男の子は何者なのか。結局先輩はワルモンだったのか。謎が謎を呼びます……。(社)
・冒頭のショーの倒れる描写に、なにか、異様なリアリティがあり、そのあとに起こる不可解な出来事も、わけがわからないなりに、とにかく起きたんだ、と納得せざるを得ませんでした。もの凄い即物的な強制力というのか、なんというのか。小説家でいうならカフカ、漫画家でいうなら諸星大二郎のような書かれたものが確かにそこにある感じをうけました。(店員S)

『正しい選択』   たなかなつみ
 > 何でも話していいんだよ、と言われた。絶対に悪いようにはしないから、と。

・すべての人が「すべて」を望むが「すべて」はすべての人にとって、手に負えるものではないことを思い知らされる、そんな怖さがある。(シ)
・嘘と真実、人を救うのはどちらか。正解は「どちらも救わない」、という救いのなさはまさに真実なのだろうと思います。正義は筋肉にこそ宿ります。ところでホラーという枠で語るテーマではないかなと。(白)
・究極のSMとはこんな感じなのでしょうか。絶望的な痛みは 一瞬で終わり、死んで解放されて嬉しい、というエピローグが浮かびました。△(社)
・とてもきわどい、すれすれのところを縫ってゆくような小説だと思いました。ひじょうに抽象として漠然とした語り口が、さいごに痛みの一点に集約される、その過程のすれすれさ。「痛くて苦しくて重いのに、それさえもが楽しくてならない」矛盾している表現なのに、そうとしかありえない、このすれすれさ……。(S)

『夏の思い出・オブ・ザ・デッド』   加楽幽明
> 雪山で遭難した友が、この夏生ける屍となって訪ねてきた。

・生ける屍と対話しているときよりも、それが去ったあとの生臭い匂いにぞっとしました。(シ)
・言い方が適切かどうかわかりませんが、解凍したての頃はさぞや生き生きとしていたのだろうなぁと想像して面白くなりました。冬と夏の対比が効いているように思います。△(白)
・世にも奇妙な感じのお話でした。死者と生者の立場が逆転する、というアイデアが面白いです。○(社長)
・やはり小説はにおいを書かなければならない、うんうん、そうだよな、と思わずひとりで頷いてしまいました。映画にも漫画にもにおいがない。でも小説のばあいは、文字に書きさえすればにおいを喚起することができる。雪山や冷房のひそやかさに対置された、夏、屍臭、ゾクゾクしました。(S)


『いこくのち』   加楽幽明
> 旅先の池の畔で少年少女たちが、のたうち回るずだ袋を水底に沈めようとしていた。

・黒い猫のような生き物はいったい何だったのだろう。どうして水に関わる事故だったのか。なんで怪異は主人公の国の言葉を話すのか。なぞがなぞを呼びどんどん怖くなるお話。○(シ)
・非常に完成度が高いです。人によっては、もっと長い文章で読みたい、などの要望があるかもしれませんが、個人的にはこの作品はこれで十分であるように思います。「のたうち回るずた袋」はたった9文字ですが、そこから広がる情景は文字数以上でなおかつ作品の中で重要な役割を果たしています。少ない制限文字数の中で言葉の選択やその並べ方にレバレッジを効かせて情景を豊かなものにするのは、超短編が最も得意とする技法であるように思います。◎(白)
・一読しただけでは、どちらが悪者なのか分からず、何度も読んでも結局分からず。そうやって悩まされる感じがまた楽しい。(社長)
・この世にはごくごく稀に、世界の何とも関係をもたず、ただ一塊の文章のみでそれ自体が自足している、宙に浮かんだ球体のような小説があるけれど(たとえばゴーゴリの外套とか)、そのたぐいの小説だと思いました。話としてはきちんと筋が通っていて、でも、読み終えてみるとまったく意味がわからない。というより意味がない。だから世界と関係の持ちようがない。たぶん、もの凄く繊細につくられた文章で、その繊細さ故に、触ろうとすればハラハラと崩れ落ちてしまうのだけど、宙に浮かんでいるから誰の手にも触れられない。(S)

『不穏なデート』   葉原あきよ
>手も触れていないのに勝手に開く扉を入ると、首がない人形の列に出迎えられた。

・妖しすぎる男が買ってくれたドレスは、おそらくこのあと出かけるパティーのためのものだろう。だがそのパーティーに出席すのは今の彼女ではなく、きっと別のなにかに変容させられた彼女にちがいない。 (シ)
・リア充なパーリーピーポーに囲まれるとそんな心地になりますよね。カルチャーショックと言えば聞こえはいいでしょうが、埋まらない溝もあることでしょう。さて、ところで彼女はどこから来た人なのでしょうか。(白)
・これはホラーなのか、もしくは主人公のメンタルがヤバイのか……。いずれにせよ、オフショルダーでデコルテが呪文に聞こえるのは重症でしょう。(社)

『よるの階段』   影絵が趣味
> ふと、アパートの外階段を折り返すとき、怖ろしさにとらわれることがあります。

・アパートに着いたときから、部屋に入るまでのわずかな時間の物語。情景描写、心理描写を尽くしてぐぐっと高まっていく恐怖心を描いたところが趣向です。(シ)
・昔は真夜中のトイレは怖かったものですが、今では電気をつけるのも億劫で真っ暗な中で用を足すことに何の抵抗もなくなってしまいました。目に見えないけどそこにいるかもしれない何かを畏れる気持ちは忘れずにいたいものです。(白)
・暗闇というものに感じる恐怖感が、リアルに描かれていると思います。たぶんその部屋にはクトルゥフ的な何かが潜んでいるのではないかと……。(社)

2017年7月18日 (火)

販売員   タカスギシンタロ

 販売員  タカスギシンタロ

 客はショーケースの商品をあれこれ眺めていた。
「これはどう使うんですか?」
 彼女は干しエビを指さした。わたしは白手袋で干しエビをつまみ上げ、説明する。
「そのまま指にはめてピンキーリングとしてお使いいただけますし、シンプルなゴールド・チェーンに通せばペンダント・トップとしても素敵ですよ」
 女性はなるほどとうなずきながらも、ちらちらと別の商品に目をやっている。しかしわたしは気づかないふりをする。
「これはまたずいぶん大きいですね」
「伊勢エビの海鮮蒸しですね。こちらはベルトのバックルなのですが、インパクトのある髪留めとしてご利用なさるお客さまもいらっしゃいます」
 なるほどねと彼女はうなずく。しかし心が伊勢エビにないのは明白だ。
「えっと、あそこにあるあれは……」
「ああ、あちらですか」
 わたしはなるべくさりげないしぐさでぶら下がったエビフライを手にとる。
「良いものですよ」
 そう言いながら彼女の耳に当てる。傍から見てもときめきが伝わってくる。
「実はこれ、ちょっと秘密があるんです」
 衣の一部を外すと、中からほんのり赤みを帯びたエビが現れた。彼女の顔がぱっと明るくなる。鏡を見ながら満足げな様子だ。彼女はぽつりとつぶやく。
「なんだかおいしそう」
 彼女とわたしは笑い合った。
「これ、いただきます」
「ありがとうございます。タルタルソースはおつけしますか?」
「お願いします」
「お箸は?」
「お箸はけっこうです。あ、レシートも」
 彼女はレジ袋をぶら下げ、店を出た。入れ違いに着飾った女性が入ってきた。その瞬間、客の関心がテナガエビにあることを確信する。
「いらっしゃいませ」
 わたしは深々とお辞儀した。

2017年6月13日 (火)

【募集】ホラー超短編


  超短編を募集します。
  東京の三軒茶屋にある「まんがの図書館ガリレオ」で夏に開催予定のホラーフェアの一環として、超短編の募集を行います。大賞受賞作品は素敵な賞品が授与されるほか、ガリレオ新聞に掲載されます。くわしくは募集要項をご覧ください。

■■「ホラー超短編」募集要項

■500文字以内の超短編を募集します。(少しくらいなら字数オーバーしても可)

■募集テーマ:ホラー超短編。広い意味で怖いお話をお送りください。

■選者:タカスギシンタロ・白縫いさや・ガリレオ社長

■各賞:大賞・ガリレオ社長賞・タカスギシンタロ賞・白縫いさや賞

■ごほうび:大賞受賞作はガリレオ新聞に掲載の上、ガリレオ一日フリーパスが進呈されます。また各賞受賞作はガリレオHPに掲載されます。

■投稿方法:件名を「ホラー超短編」として、kotorinokyuden01@mac.comまでメールにてお送りください。作品タイトル、筆名、作品本文をお忘れなく。

■しめきり:2017年7月17日(月)

■発表:7月31日(日)ガリレオHP、ガリレオ新聞、当ブログにて。

※ご投稿いただいた方には三日以内にタカスギシンタロから返信のメールをお送りいたします。返信がない場合は届いていない可能性がありますので、この記事にコメントするか、twitter(@kotorigun)等でお知らせ下さい。

2017年5月23日 (火)

【発表】「もうすぐオトナの超短編」タカスギシンタロ選

◆◆◆作品発表

  「もうすぐオトナの超短編」タカスギシンタロ選の選考結果を発表します。
  最優秀賞・優秀作品の本文は、後日、フリーペーパー「コトリの宮殿」増刊号に掲載します。フリーペーパーを手に入れにくいひとのためには、大きめの画像をブログに掲載予定ですのでおたのしみにお待ちください。
  また優秀作品に佳作を加えた超短編作品集を、2018年に電子書籍として出版予定です。そちらもご期待ください(作者の方々へは編集開始前にまたご相談申し上げます)。
  それでは作品の発表です。記事の最後の方に寸評も掲載しておりますので合わせてどうぞ。


□□自由題部門

□最優秀賞
『素敵なおはなし』   白縫いさや

□優秀作品
『ひも』 山下鏡馬
『日時計の町』   はやみかつとし
『お』   葉原あきよ

□佳作
『誕生』   たなかなつみ
『園』   穂坂コウジ
『龍の鱗』   春名トモコ
『スマホの精』   海音寺ジョー


■■兼題部門(三題噺「広場」「大人」「本」)

■最優秀賞
『謎』   穂坂コウジ

■優秀作品
『朗読会』    春名トモコ
『言わぬが花』   千百十一
『メーデー』   タキガワ
『春の窓』   元木一人
『卒業』   松岡永子

■佳作
『水のみ広場』   といじま
『あいについて』 空虹桜
『ゴクサイコウサテン』   南風野さきは
『快晴のち雷雨の予報』   氷砂糖
『an uprising』   胡乱舎猫支店
『いずれ』   佐多椋


◆◆◆評

□□自由題部門

□最優秀賞

『素敵なおはなし』   白縫いさや
 思えば誰もが世界の紐の「端」なのかもしれない。自分が世界の一部である、あるいは世界そのものであることに気づいたものだけが発見できる世界の端っこ。その端と端がねじれながら結ばれるとき、世界は閉じながら奇妙な美を出現させる。現代の童話ともいうべき素敵なおはなしです。

□優秀作品

『ひも』 山下鏡馬
 目眩がするような魔術的作品で、最優秀作品にしようかと悩んだのですが、いかんせんいくら読んでも読み終わらないし、いまだに読み続けていますたすけて。

『日時計の町』   はやみかつとし
 太陽の季節移動とともに、街そのものが傾斜するという壮大なイメージの作品。影を失うことで実体も存在感を失ってしまう儚い世界にもかかわらず、ゆらゆらと不思議な熱を帯びていて魅力的です。

『お』   葉原あきよ
 おじさんやおじいさんの頭につく「お」ははたして御なのか伯なのか叔なのか小なのか? いやいや「尾」なのかもしれない。頭に尻尾がくっつけば、既成概念がくるっと輪になってひっくり返る。そんな、かわいくもひねくれた快作。

□佳作

『誕生』   たなかなつみ
 人の生は、自分の言葉を獲得しようとした瞬間からはじまるのかも知れない。本作の言葉と自己との強力な結びつきに共感しました。

『園』   穂坂コウジ
 「象の鼻で眠る蛇」とはなんなのか。奇妙な動物のイメージの連鎖が、いつしか官能の世界へと連れて行ってくれました。


『龍の鱗』   春名トモコ
 ガラスでできた桜の花びらの音楽的な響き。そしてその由来がまさか墜落した龍だとは。美しさのなかに静かな恐ろしさも含んだ大きな作品。

『スマホの精』   海音寺ジョー
 スマホの精、何の役にも立たないよ。でもなんかほっとする魅力にあふれた作品です。

■■兼題部門(三題噺「広場」「大人」「本」)

■最優秀賞

『謎』   穂坂コウジ
 この世界には謎がある、あるいはあった、という感覚は誰しも持っているのではなかろうか。しかし通常は日々の生活のなかでその謎が何だったかさえ忘れている。しかし本作ではその謎が、ある日突然、懐かしい顔を見せる。この物語は冒険のはじまりであると同時に死の予感でもあり、つまり超短編的な衝撃に満ちている。

■優秀作品

『朗読会』    春名トモコ
 この作品のカタカナ部分だけを抜き出して読んでみましょう。ココナッツ、アコーディオン、ペンギン、ヤシ、ピンチ、タコ、ペタペタ、ブーゲンビリア……。ほら、読みたくなったでしょう?

『言わぬが花』   千百十一
 ガイドブックの奇妙でほのぼのとした観光案内から、Webマップのストリート・ビューへ移行するやいなや、にわかに世界が不穏な空気感を持って迫ってくる。緩急を生かして見事。

『メーデー』   タキガワ
 すずらんの香りが物語全体を包んでいる。だからすずらんに支配されたこの世界では、その花が鈴の音を鳴らしたとしても全く違和感を感じない。すずらん、そして子どもたちのメーデー。五月のさわやかさが極まった作品。


『春の窓』   元木一人
 この物語にはいくつか不思議な背景がある。なぜ窓の外の広場では焚書が行われているのか。なぜ本が自意識をもっているのか。どちらも幻覚であるとすると、今度はノックもなしに入ってきた母親の存在がにわかに揺らぎ出す。二重三重に幻想の罠が張り巡らされた作品だと思います。


『卒業』   松岡永子
 110文字という短さのなかで破綻なく三題噺を完成させる筆力に脱帽です。タイトルの「卒業」はただの卒業ではなく、ひとつの世界の終わりのように感じます。

■佳作

『水のみ広場』   といじま
 「なんだろう?」と思わせるタイトルで、しかもその名の由来がちゃんと説明されるところに誠実さを感じます。短さのなかに暖かさを感じる作品です。

『あいについて』 空虹桜
 主人公の語りがぐいぐいと速度感を増していき、最後に炸裂するところが快感です。

『ゴクサイコウサテン』   南風野さきは
 風船に満ちた広場の、風船が存在しない空隙の部分が、不思議な存在者として浮かび上がるイメージが象徴的です。

『快晴のち雷雨の予報』   氷砂糖
 お題の「広場」「本」「大人」の使い方が、それぞれ必然的で見事です。大人になれない少年少女が本になってしまう世界が、心にぐさっときました。

『an uprising』   胡乱舎猫支店
 なんだろうこの謎めいた設定は……とぐいぐい引き込まれる作品。半自立行動式の武器がかっこいいです。「大人」の使い方に工夫があります。

『いずれ』   佐多椋
 奇妙な儀式に興味を持ちつつ読み進めたところで、最後の最後に本を括弧つきの《本》にすることで、本そのものの存在を謎めかしてしまうところにぞくっとしました。

2017年4月17日 (月)

【発表】回文超短編

■■回文超短編の選考結果を発表します。

■三田たたみ賞(イベント大賞) 『俺と彼女と回文』 といじま

■松本楽志賞 『そして夢現は回り続ける』 たなかなつみ

■千百十一賞 『さようなら私たち』 葉原あきよ

■タカスギシンタロ賞 『悪訳』 佐多椋

■たくさん点をあつめたで賞  『悪訳』 佐多椋

※そのほかの成績上位作品

『はじまり』 胡乱舎猫支店
『タナカノカナタ』 はやみかつとし
『こねこ』 国東
『5月を通過後』 空虹桜
『だいたいたいだ』 穂坂コウジ
『啓蟄の候』 松岡永子

■■評

■三田たたみ

『俺と彼女と回文』 といじま …… ラノベ的でかわいい。
『さようなら私たち』 葉原あきよ …… 回文がいい感じに盛り込まれてる。
『こねこ』 国東 …… ぬこさまかわゆす。
『5月を通過後』 空虹桜 …… 大人の恋愛っていい。
『紳士的やりとり』  海音寺ジョー …… 擬音語が楽しげ。
『うたう子らの祈り』 よもぎ …… 一人称が自然。
『だいたいたいだ』 穂坂コウジ …… 落語っぽいオチ。
『松岡永子』 啓蟄の候 …… 不思議な感じ。
『悪訳』 佐多椋 …… 回文が一番好み。
『はじまり』 胡乱舎猫支店 …… ホラーと回文のギャップが面白い。
『そして夢現は回り続ける』 たなかなつみ …… 詩的な感じ。
『タナカノカナタ』 はやみかつとし …… 回文とのギャップがシュール。

■松本楽志

『そして夢現は回り続ける』 たなかなつみ …… えくぼをぼくへ。ねだるたなかなつみ 綱かな? 樽だね。

■千百十一

『さようなら私たち』 葉原あきよ …… 入っている回文の最後のものが、無理がなくて詩としても美しい。作品の構造自体も、回文のように最初の出来事と最後のできごとがつながっていて、真ん中で軸になる飛躍もあり、綿密に考えられていると思います。この企画でこの回文ができ、この作品ができて良かったなあという気になりました。

『だいたいたいだ』 穂坂コウジ …… 最初の一行が枕、最後の会話がオチというミニ落語になっているんですね。このお話自体が極楽落語。とくに、最後の回文を回文そのままの形で出さずに、読者が「ああ、あの」と分かって脳内で言ってしまうように仕組んだのが、オチとして落語らしいのではないでしょうか。

『悪訳』 佐多椋 …… 力技のような回文。よくぞ、この文字列から意味を抽出して超短編にまで持って行ったものです。しかも、一読して不自然にならないように全体を不自然な文体で書くという逆転の発想ですが、主人公の抱える欠落感と舌足らずな言葉が合っていて、成功していると思います。

『はじまり』 胡乱舎猫支店 …… 「監視カメラ」の語をひっくり返しただけでこんな面白い回文に! いい言葉をみつけられたなあ、という、してやられた感があります。さてどう進化するのか、といった時に、カメラとしての機能から全く離れた進化をさせたのも、面白い発想でした。しかも、監視カメラのまるで人を狙っているような不気味さと、しっかり繋がっていて無理がありません。

『タナカノカナタ』 はやみかつとし …… 突き抜けたバカバカしさで楽しませていただきました。表題以外の回文の入れ方が無茶といえば無茶なのだけど、そこが目的地ではなくて彼方は空っぽというのは、回文をひねりすぎて何でも逆さまによむのがふっとアホらしくなる境地、でしょうか。「どのタナカだよ」という突っ込みに、「突っ込むところがそこですか」と突っ込みつつ、N.タナカが誰か分からなかったけれど、西荻には分かる人がたくさんいそうな気がします。

『うたう子らの祈り』 よもぎ …… 色彩の強い作品が並ぶなかに、ふんわりした色合いのつつましやかな佇まい、と感じました。

『啓蟄の候』 松岡永子 …… 夢の水位、浮御堂。おだやかなやりとり。何とも幸福感があって、季節外れの宝船にふさわしいと思いました。

■タカスギシンタロ

『悪訳』 佐多椋 …… 作中の回文「《主》、手に血の跡。レムの母、『母』の群れとあの地にて死ぬ。」が象徴的でしかも意味がよく分からない。その異様さをテキスト全体に拡張して、たどたどしく切断された世界をみごとに表現したと思います。

『さようなら私たち』 葉原あきよ …… 回文「十は鳴かず、私の遺体の下、わずかな羽音」がすばらしい。この回文をまずつくってから物語を展開したのかと思ったら、そうではないらしく、順を追って創作したとのこと。もはや回文師の域。

『はじまり』 胡乱舎猫支店 …… 静かな怖さをたたえた本文に、いきなり挿入された「監視カメラメカ進化」の回文が、世界の奇妙さをさらに増幅して怖さアップ。

『そして夢現は回り続ける』 たなかなつみ …… 「ダンスは済んだ」はずなのに、回文のウロボロス的円環が悪夢を回し続けている。回文の回転性をうまく物語に取り入れていると思いました。

『うたう子らの祈り』 よもぎ …… もしかすると「かあちゃん」はすでに亡くなっていて、ランタンは迎え火なのかな? 「小唄うたう子」がなんともいえない昭和感を醸し出しています。

2017年2月28日 (火)

【募集】「20周年!もうすぐオトナの超短編」

□□20周年!もうすぐオトナの超短編□□

  1998年、本間祐氏がAsahi-netで「超々短編広場」をスタートさせました。このコンテンツからは峯岸可弥、たなかなつみ、松本楽志、タカスギシンタロなど、さまざまな超短編の書き手が誕生しています。そして2018年。つまり来年は超短編誕生から20年を迎える節目の年ということになります。
  そこでフリーペーパー「コトリの宮殿」では超短編20周年を記念して、さまざまな選者選による超短編の募集企画を開催します。選ばれた優秀作品は「コトリの宮殿」に掲載されます。また、優秀作品をまとめた超短編集をうのけブックスより電子書籍として出版予定です。作品掲載者にはささやかながらお礼を差し上げます。
  募集要項詳細は以下の通りです。

【募集】「20周年!もうすぐオトナの超短編」

□□募集要項

□自由題部門……500文字以内の物語。タイトル内容自由。
□兼題部門………500文字以内の物語。内容は各選者出題による。
□しめ切り………年間予定を参考のこと。ゆるい募集なので作品数が少ない場合は延長します。
□投稿方法………kotorinokyuden01@mac.comまでメールにてお送りください。
           件名に選者の名前をお書きください。(例:峯岸可弥)
           本文にタイトル、自由題or兼題の選択、筆名、作品本文をお忘れなく。

□□年間予定(随時更新)

□タカスギシンタロ選(1)……募集終了しました。
しめ切り……2017年4月末日
自由題………タイトル・内容自由。
兼題…………三題噺「大人」「広場」「本」:お題の単語三つすべてを本文に入れ込んでください。タイトル自由。

□峯岸可弥選
しめ切り……2017年6月18日(日)……募集終了しました。
自由題………タイトル・内容自由。
兼題…………テーマ超短編「暴力」:暴力をテーマとした超短編。タイトル自由。

□松本楽志選
しめ切り……2017年8月20日(日)……募集終了しました。
自由題………タイトル・内容自由。
兼題…………テーマ超短編「此処と此処ではない何処か」(タイトル自由)

「何処か」というのは、距離的に離れている場所でも良いし、パラレルワールドでも、過去や未来の時間的な隔たりがある場所でも、なんでもいいのですが、たんに異世界のことをただ記述するのではなく、こことそこがなんらかの幽かな関わりを持つようなおはなしが読みたいです。(松本楽志)

□たなかなつみ選……募集終了しました。
しめ切り……2017年10月29日(日)
自由題………タイトル・内容自由。
兼題…………「期間限定」:「期間限定」をテーマとした超短編をお送りください。タイトル自由。

□千百十一選
しめ切り……2017年12月31日(日)
自由題………タイトル・内容自由。
兼題…………「年の暮れ」:「年の暮れ」をテーマとした超短編をお送りください。タイトルは自由です。

□□氷砂糖選
しめ切り……2018年2月4日(日)
自由題……タイトル・内容自由。
兼題………「お伽話」  (タイトル自由)

and more........おたのしみに!

2017年2月15日 (水)

【募集】回文超短編

超短編を募集します。

4月15日(土)開催のイベント「上から下からどうぞ! 回文と超短編」との連動企画です。お送りいただいた作品の中から優秀作品を選び発表します。

■募集要項■

□お題:回文超短編=七文字以上の回文を本文中に入れてください。オリジナルの回文を作るのが難しい場合は伝統的な回文を使用しても可とします。(例:たけやぶやけた)

□文字数:500文字以内(500文字を少々越えても問題ありません)。

□しめ切り:2017年3月26日(日)

□投稿方法:件名を「回文」としてメールでお送りください。タイトル、本文、作者名をお忘れなく。

□投稿用アドレス:kotorinokyuden01@mac.com(タカスギシンタロメール)

□優秀作品発表:4月15日(土)開催のイベント「上から下からどうぞ! 回文と超短編」および当ブログで発表いたします。選者は、三田たたみさん、松本楽志、千百十一、タカスギシンタロが務めます。

□賞:三田たたみ賞(大賞)、松本楽志賞、千百十一賞、タカスギシンタロ賞。大賞作品には三田たたみさんからご褒美があるかも……。

□お送りいただいたすべての作品はイベント当日配布される冊子に掲載されます。また希望者には冊子をお送りいたします。

□冊子の出来が良かった場合、体裁を整えて文学フリマ等で販売する可能性があります。その場合原稿料は出ませんが、完成冊子を一冊差し上げます。

□ご投稿メールには2、3日以内に返信させていただきます。返信がない場合はメールが届いていない可能性がありますので、お手数ですがもう一度お送りいただくか、このブログへのコメント、もしくはtwitter(@kotorigun)等でご連絡ください。

以上。
よろしくお願いします。

2017年2月 2日 (木)

回文と超短編のイベント(ゲスト三田たたみさん)を開催します。

      ——超短編マッチ箱西荻出張編——
■■上から下からどうぞ!——回文と超短編——■■


  今回の超短編イベントは、回文をとりあげます。回文は、上から読んでも下から読んでも同じ読みになるようにする言葉遊び。「たけやぶやけた」などがその例です。江戸の言葉遊びである、雑俳のひとつでもあります。
  先年『めぐる季節の回文短歌』(書肆神保堂)を出された、回文短歌師、三田たたみさんをゲストにお迎えし、回文の面白さ、遊戯性、超短編など短い文芸との関係性を探ります。また、簡単なワークショップを行い、優秀作品にはたたみさんより素敵なごほうびがあるかも? イベントが終わるころには誰もが回文を作れるようになっているはずです。

 ※今回は回文初心者の方を対象とした内容です。

日時 :4月15日(土) 19時〜21時
会 場:信愛書店 en=gawa(〒167-0053杉並区西荻南2-24-15) googleマップ
参加費:1000円
定員:20名
※筆記用具をお持ちいただくと、よりイベントをお楽しみいただけると思います。

予 約:参加希望者はタカスギシンタロまでメールでお申し込み下さい。氏名・人数をお忘れなく。また、イベント終了後、懇親会を開く予定です。参加希望者はその旨お知らせ下さい。

メール:kotorinokyuden01@mac.com(タカスギシンタロ)

※メールをいただいた方には2、3日以内に返信を差し上げます。返信がない場合はメールが届いていない可能性がありますので、再送するか、twitter(@kotorigun)等でご指摘ください。

■イベント構成

1部:三田たたみさんトーク(聞き手:タカスギシンタロ・小野塚力・松本楽志?)・回文ワークショップ。

2部:ワークショップ講評・募集超短編作品の講評と優秀作発表

イベントにあわせて超短編の募集もおこないます。テーマは「回文入り超短編」です。詳しい募集要項はこのブログにて近日お知らせいたします。


◇◇三田たたみさんプロフィール

回文作家。東京都在住。2010年、回文短歌に出会い、一日一回文短歌をスタート。
その後ツイッター回文祭などのイベントを主催。
現在もネットを中心に、短歌や小説など幅広い創作活動を展開している。

著者HP:素晴らしき回文の世界 http://kaibunsi.blog41.fc2.com/
ツイッター:@aqaqaqua

2016年11月14日 (月)

【結果発表】三題噺「キノコ」「楽器」「指ぬき」

11月12日に開催されたイベント「声に出して読まれたいうのけブックス」で、三題噺「キノコ」「楽器」「指ぬき」の結果が発表されました。大賞はふたつ!

■栗田ひづる賞(大賞) 「指ぬきのこと」(葉原あきよ) 「鳥の指ぬき」 (といじま)
■松本楽志賞 「作家」(よもぎ)
■タカスギシンタロ賞 「この夜でなければ」(国東)

大賞受賞作品「指ぬきのこと」と「鳥の指ぬき」はごほうびとして栗田ひづるさんに朗読していただきました。葉原さん、といじまさん、おめでとうございます。

その他の成績優秀作品は以下の通りです。

「彼女の小指」 高田九円
「月命日」 だんぞう
「人間はものとして扱うのがよい」 大休真紀子
「アドバイス」 水池亘
「薬指を楽器とする」 松岡永子
「陸の食事」 氷砂糖
「愛ある世界」 空虹桜
「ミドリ君」 櫛木千尋
「おとぎの国」 松岡永子
「光る旋律」 はやみかつとし
「ファンファーレ」 穂坂コウジ

たくさんのご投稿ありがとうございました。

2016年9月20日 (火)

【募集終了】超短編イベント「声に出して読まれたいうのけブックス」開催のお知らせ

【募集終了】定員に達したため、募集を締め切ります。キャンセルが出た場合はまたお知らせいたします。(10/27)

栗田ひづるさんの朗読イベントを開催します

——うのけブックス立ち上げ記念——

□□声に出して読まれたいうのけブックス□□

  2014年のイベント「声に出して読まれたい超短編」でお世話になった、声優でナレーターの栗田ひづるさんが再び登場です。
  今回はうのけブックスの立ち上げを記念して『ピアノ』『不思議の国のアリスを超短編として読む』『幻色キノコ図鑑』の収録作品を栗田ひづるさんに朗読していただきます。また、事前に募集した超短編の優秀作品発表も行い、大賞受賞作品はご褒美として栗田さんに朗読していただきます。
 


□日 時:2016年11月12日(土)19:00〜21:00(開場18:30)

□会 場:銀盛会館(東京都杉並区西荻窪南2-18-4) google map

□ゲスト:栗田ひづるさん

□入場料:1000円

□定 員:30名

□予 約:参加希望者はタカスギシンタロまでメールでお申し込み下さい。氏名・人数をお忘れなく。また、イベント終了後、懇親会を開く予定です。参加希望者はその旨お知らせ下さい。

□メール:kotorinokyuden01@mac.com(タカスギシンタロ)

※メールをいただいた方には2、3日以内に返信を差し上げます。返信がない場合はメールが届いていない可能性がありますので、この記事にコメントしていただくか、twitter(@kotorigun)等でご指摘ください。

■イベント構成

1部:栗田ひづるさん朗読
休憩
2部:栗田ひづるさん朗読と超短編優秀作品発表

イベントにあわせて超短編の募集も行っています。テーマは三題噺「キノコ」「楽器」「指ぬき」です。詳しい募集要項はこちら

2016年9月 6日 (火)

『罪と罰』(タカスギシンタロ)三題噺「キノコ」「楽器」「指ぬき」作例

     罪と罰   タカスギシンタロ

 雨蛙の野郎が犯した「罪」に関しては直接聞くが良いさ。酔っぱらいさえすれば、いくらでも話してくれるよ。ただしやつはザルだがね。俺が話してやれるのはやつの「罰」の方だ。そう、蝦蟇の女王に賜った特別の刑罰さ。

 真夜中のこと。やつはキノコの傘に縛りつけられていた。一雨のあとキノコはぐんぐん成長し、やつのからだを持ち上げていった。刑場に備えつけられたイガグリめがけてな。キノコはぐんぐん伸びていく。やつのからだは持ち上がる。ついにイガグリが突き刺さり、やつは悲鳴を上げた。それこそが蝦蟇の女王が聞きたかった最高の楽器の音色だったというわけさ。
 しばらくして、やつは死体置き場でむくりと起き上がった。そして口からゲッと指ぬきを吐き出したのさ。指ぬきのおかげで栗のイガもやつの体を貫くことはできなかったんだ。もっとも胃には少々穴が開いたがね。

 ほら、やつが来たよ。ほんとに一杯おごる気かい? じゃあ俺たちはやつの腹の下で口を開けて待ってるよ。何しろやつはザルだからな。

2016年8月30日 (火)

【超短編募集】三題噺「キノコ」「楽器」「指ぬき」

超短編を募集します。

11月12日(土)開催のイベント「声に出して読まれたいうのけブックス」との連動企画です。
栗田ひづる賞受賞作品は朗読のご褒美つきです。ご投稿お待ちしております。

■募集要項■

□お題:三題噺「キノコ」「楽器」「指ぬき」

□文字数:500文字以内(500文字を少々越えても問題ありません)。

□本文中に「キノコ」「楽器」「指ぬき」の文字列を用いてください。各文字列を複数回使用してもかまいません。「キノコ」は「きのこ」「茸」でも可。→作例「罪と罰」(タカスギシンタロ)

□しめ切り:2016年9月25日(日)

□投稿方法:件名を「キノコ」としてメールでお送りください。タイトル、本文、作者名をお忘れなく。

□投稿用アドレス:kotorinokyuden01@mac.com(タカスギシンタロメール)

□優秀作品発表:11月12日(土)開催のイベント「声に出して読まれたいうのけブックス」および当ブログで発表いたします。

□賞:栗田ひづる賞(大賞)、松本楽志賞、タカスギシンタロ賞。大賞作品はイベント当日朗読のご褒美があります。

□お送りいただいたすべての作品はイベント当日配布される冊子に掲載されます。また希望者には冊子をお送りいたします。

□冊子の出来が良かった場合、体裁を整えて文学フリマ等で配布する可能性があります。その場合原稿料は出ませんが、完成冊子を一冊差し上げます。

□ご投稿メールには2、3日以内に返信させていただきます。返信がない場合はメールが届いていない可能性がありますので、お手数ですがもう一度お送りいただくか、このブログへのコメント、もしくはtwitter(@kotorigun)等でご連絡ください。

以上。
よろしくお願いします。

2016年4月18日 (月)

【発表】「絶滅動物」の選考結果

4月16日開催の超短編イベントで「絶滅動物」の選考結果が発表されましたので、お知らせいたします。

■大賞
 「ニホンオオカミ殺人事件の容疑者が小学校三年生の時に宿題で書いた日記」(櫛木千尋)(川端◎小野塚△高杉△)

(「りす・りす」(国東)も同点でしたが、川端裕人さんの票が入っていて、かつ会場にいらっしゃった櫛木さんを大賞受賞者とさせていただきました。

■川端裕人賞
 「ニホンオオカミ殺人事件の容疑者が小学校三年生の時に宿題で書いた日記」(櫛木千尋)

■小野塚力賞
 「飛ぶことならできる」(たなかなつみ)

■松本楽志賞
 「りす・りす」(国東)

■タカスギシンタロ賞
 「ローリング・サンダー」(穂坂コウジ)

そのほかの成績優秀作品

「彼のニホンオオカミ」  (葉原あきよ)
「ドードーの駅」  (遠里小里(オリコリ))
「幻の淡水魚」  (海音寺ジョー)
「井戸」  (森野 照葉)
「理想的」  (タキガワ)
「ドードーと私」  (葉原あきよ)
「カモノハシ少女」  (紙男)
「その前夜」  (笛地静恵)
「火影」 (屋樹ひつじ)
「水辺にて」  (胡乱舍猫支店)
「不死鳥」  (猫春雨)

たくさんのご投稿ありがとうございました。

«【募集】超短編「絶滅動物」(募集終了)

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