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2008年7月11日 (金)

「今昔物語異聞」「シベリアの猫」(森山東)

 森山東さんは、もう十年来の超短編の仲間です。森山さんはずっと「舞妓の修業シリーズ」という超短編を書いていらっしゃっていて、だから「お見世出し」という、やはり舞妓ものの作品で第11回日本ホラー小説大賞短編賞を受賞されたときも、受賞作がどこかで超短編と結びついているような気がして、いっそううれしく思ったものでした。

 さて、森山東さんの場合、最初の段階でぼくが候補にあげたのは三作品。その三作に加えて、森山さんは候補作として、何作品かをメールで送ってきてくださり、やり取りの結果、ひとつは「シベリアの猫」でいこうということになりました。
 しかし、じつはオリジナルの「シベリアの猫」(以下シベ猫)には問題がありました。オチの部分が差別的表現になりはしないかと、森山さんは少々心配されていたのです。そこでオリジナルの「かわいそうな○○○○」を「さまよえる○○○○」に変え、さらに現在あるような形「アラビアの恋人たち」に改稿していただいたのでした。これにて一件落着……。
 とはいきませんでした。永遠の問題作、シベ猫はまたしてもやってくれたのです。そう、世を騒がせた中国の毒入りギョウザ事件が起きたのです。食の安全に敏感になっているご時世に、この内容で大丈夫なのか。森山さんとひげは一瞬凍りつきました。
 ところで、シベ猫を初めてお読みになった方は、そもそもこの作品は「一連の食品偽装事件など、食の問題を題材に書き下ろされたものではないのか」と思われたかも知れません。しかし本作は、じつは2000年に内輪のメーリングリストで発表された、競作「シベリアの猫」への投稿作だったのです。ですからほかにもシベ猫は存在します。有名なところでは「超短編マッチ箱2号」に掲載されたたなかなつみのシベ猫などがあります。
 話はそれましたが、シベ猫は、8年後の世界を予見したかのようなオソルベキ作品だったのです。そんなこんなで男達の決意は揺らぎかけましたが、やはりどうしてもこの独特の毒のある笑いのテイストが捨てがたく、ぼくは掲載に踏み切ることにしました。こわいけど笑える作品は貴重な存在なのです。
 もう一作は「今昔物語異聞」。この作品に関してはふくらまして中篇にしようかという構想もあったそうですが、森山さんは男気をみせて、掲載を許可してくれたのです。ありがとうございます。

 ともかく、『超短編の世界』を出すにあたり森山さんの存在は大きかったと思います。ほとんどアマチュアばかりの集団の中で、プロの作家がいるということは心強いですし、営業サイドからしても売りになったのではないでしょうか。じっさい帯にも森山さんの名が使われております。
 「文学仲間からプロの作家が現れる」ということは、「プロの作家と知り合いになる」ことよりもむずかしいのではないかと思います。森山さんの力をかりて、本を出せたことは、運が良かったと思います。

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