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2011年5月17日 (火)

『無題』倉田タカシ

『無題』
      倉田タカシ

牛の顔をもつ牛が、生まれたという。
報せはかつてない速さで村を駆けめぐり、知らされた村長もかつてない速さで村道を駆けた。
「頭と体がおなじ種類……ありえんことだ……あってはならぬ……」
息を切らす村長のトサカがはげしく揺れる。
騒々しく鳴きながら後を追うのは魚の頭をもつ猫だ。
到着し、それを目にした村長のくちばしがポカンと開いた。
まちがいなく牛の体に牛の頭、だがその頭は石だったのだ。
「頭が無生物……新しい……」
大異変以前にもそんな生き物はいたはずがない。
「頭部と体で素材が異なるので、多様性が保証されているのでしょう」
助役の魚猫がそう述べ、鶏豚である村長は釈然としない表情で頷いた。
牛牛は草を主食にしたが、石の頭だけがどんどん育つ。
見上げるほどの大きさになって、樹木をどんどん
食い荒らすようになる。
「これは致命的なバグだ!」
村長の気付きは時おそく、
村の生態系はみるみる破壊されてゆくのだった…
以上が、私の会社を襲った悲劇を
わかりやすい喩え話で説明したものです。
そうしめくくる相手の頭部は木でできており、
私は釈然としない表情で頷いた。


(超短編マッチ箱 beco cafe 出張編・大賞受賞作品)

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