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2017年5月

2017年5月23日 (火)

【発表】「もうすぐオトナの超短編」タカスギシンタロ選

◆◆◆作品発表

  「もうすぐオトナの超短編」タカスギシンタロ選の選考結果を発表します。
  最優秀賞・優秀作品の本文は、後日、フリーペーパー「コトリの宮殿」増刊号に掲載します。フリーペーパーを手に入れにくいひとのためには、大きめの画像をブログに掲載予定ですのでおたのしみにお待ちください。
  また優秀作品に佳作を加えた超短編作品集を、2018年に電子書籍として出版予定です。そちらもご期待ください(作者の方々へは編集開始前にまたご相談申し上げます)。
  それでは作品の発表です。記事の最後の方に寸評も掲載しておりますので合わせてどうぞ。


□□自由題部門

□最優秀賞
『素敵なおはなし』   白縫いさや

□優秀作品
『ひも』 山下鏡馬
『日時計の町』   はやみかつとし
『お』   葉原あきよ

□佳作
『誕生』   たなかなつみ
『園』   穂坂コウジ
『龍の鱗』   春名トモコ
『スマホの精』   海音寺ジョー


■■兼題部門(三題噺「広場」「大人」「本」)

■最優秀賞
『謎』   穂坂コウジ

■優秀作品
『朗読会』    春名トモコ
『言わぬが花』   千百十一
『メーデー』   タキガワ
『春の窓』   元木一人
『卒業』   松岡永子

■佳作
『水のみ広場』   といじま
『あいについて』 空虹桜
『ゴクサイコウサテン』   南風野さきは
『快晴のち雷雨の予報』   氷砂糖
『an uprising』   胡乱舎猫支店
『いずれ』   佐多椋


◆◆◆評

□□自由題部門

□最優秀賞

『素敵なおはなし』   白縫いさや
 思えば誰もが世界の紐の「端」なのかもしれない。自分が世界の一部である、あるいは世界そのものであることに気づいたものだけが発見できる世界の端っこ。その端と端がねじれながら結ばれるとき、世界は閉じながら奇妙な美を出現させる。現代の童話ともいうべき素敵なおはなしです。

□優秀作品

『ひも』 山下鏡馬
 目眩がするような魔術的作品で、最優秀作品にしようかと悩んだのですが、いかんせんいくら読んでも読み終わらないし、いまだに読み続けていますたすけて。

『日時計の町』   はやみかつとし
 太陽の季節移動とともに、街そのものが傾斜するという壮大なイメージの作品。影を失うことで実体も存在感を失ってしまう儚い世界にもかかわらず、ゆらゆらと不思議な熱を帯びていて魅力的です。

『お』   葉原あきよ
 おじさんやおじいさんの頭につく「お」ははたして御なのか伯なのか叔なのか小なのか? いやいや「尾」なのかもしれない。頭に尻尾がくっつけば、既成概念がくるっと輪になってひっくり返る。そんな、かわいくもひねくれた快作。

□佳作

『誕生』   たなかなつみ
 人の生は、自分の言葉を獲得しようとした瞬間からはじまるのかも知れない。本作の言葉と自己との強力な結びつきに共感しました。

『園』   穂坂コウジ
 「象の鼻で眠る蛇」とはなんなのか。奇妙な動物のイメージの連鎖が、いつしか官能の世界へと連れて行ってくれました。


『龍の鱗』   春名トモコ
 ガラスでできた桜の花びらの音楽的な響き。そしてその由来がまさか墜落した龍だとは。美しさのなかに静かな恐ろしさも含んだ大きな作品。

『スマホの精』   海音寺ジョー
 スマホの精、何の役にも立たないよ。でもなんかほっとする魅力にあふれた作品です。

■■兼題部門(三題噺「広場」「大人」「本」)

■最優秀賞

『謎』   穂坂コウジ
 この世界には謎がある、あるいはあった、という感覚は誰しも持っているのではなかろうか。しかし通常は日々の生活のなかでその謎が何だったかさえ忘れている。しかし本作ではその謎が、ある日突然、懐かしい顔を見せる。この物語は冒険のはじまりであると同時に死の予感でもあり、つまり超短編的な衝撃に満ちている。

■優秀作品

『朗読会』    春名トモコ
 この作品のカタカナ部分だけを抜き出して読んでみましょう。ココナッツ、アコーディオン、ペンギン、ヤシ、ピンチ、タコ、ペタペタ、ブーゲンビリア……。ほら、読みたくなったでしょう?

『言わぬが花』   千百十一
 ガイドブックの奇妙でほのぼのとした観光案内から、Webマップのストリート・ビューへ移行するやいなや、にわかに世界が不穏な空気感を持って迫ってくる。緩急を生かして見事。

『メーデー』   タキガワ
 すずらんの香りが物語全体を包んでいる。だからすずらんに支配されたこの世界では、その花が鈴の音を鳴らしたとしても全く違和感を感じない。すずらん、そして子どもたちのメーデー。五月のさわやかさが極まった作品。


『春の窓』   元木一人
 この物語にはいくつか不思議な背景がある。なぜ窓の外の広場では焚書が行われているのか。なぜ本が自意識をもっているのか。どちらも幻覚であるとすると、今度はノックもなしに入ってきた母親の存在がにわかに揺らぎ出す。二重三重に幻想の罠が張り巡らされた作品だと思います。


『卒業』   松岡永子
 110文字という短さのなかで破綻なく三題噺を完成させる筆力に脱帽です。タイトルの「卒業」はただの卒業ではなく、ひとつの世界の終わりのように感じます。

■佳作

『水のみ広場』   といじま
 「なんだろう?」と思わせるタイトルで、しかもその名の由来がちゃんと説明されるところに誠実さを感じます。短さのなかに暖かさを感じる作品です。

『あいについて』 空虹桜
 主人公の語りがぐいぐいと速度感を増していき、最後に炸裂するところが快感です。

『ゴクサイコウサテン』   南風野さきは
 風船に満ちた広場の、風船が存在しない空隙の部分が、不思議な存在者として浮かび上がるイメージが象徴的です。

『快晴のち雷雨の予報』   氷砂糖
 お題の「広場」「本」「大人」の使い方が、それぞれ必然的で見事です。大人になれない少年少女が本になってしまう世界が、心にぐさっときました。

『an uprising』   胡乱舎猫支店
 なんだろうこの謎めいた設定は……とぐいぐい引き込まれる作品。半自立行動式の武器がかっこいいです。「大人」の使い方に工夫があります。

『いずれ』   佐多椋
 奇妙な儀式に興味を持ちつつ読み進めたところで、最後の最後に本を括弧つきの《本》にすることで、本そのものの存在を謎めかしてしまうところにぞくっとしました。

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