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2018年2月

2018年2月19日 (月)

【発表】「もうすぐオトナの超短編」氷砂糖選

■■超短編20周年記念企画「もうすぐオトナの超短編」氷砂糖選結果発表

■兼題部門「お伽話」
【最優秀賞】
青いカナリア     タキガワ

【優秀賞】
かたつむりの唄   穂坂コウジ
御伽噺集   五十嵐彪太
神々のかたり   なな

【佳作】
坊の木枯らし   といじま
イかロ   茶林小一

■自由題部門
【最優秀賞】
歌う鳥   凪野基

【優秀賞】
ちるちるみちる   なな
花はどこへ行ったの   穂坂コウジ

くわしい選者評は以下をご覧ください。

■■選者評

■兼題部門 最優秀賞

□青いカナリア      タキガワ
 寓話としてのお伽話。青という色にマッチした哀しみを湛えた物語で、とても惹かれました。最近知った言葉でいうと「エモい」お話です。すごく好みです。哀しみをイメージさせる青と明るさをイメージさせる黄色を始め、いくつもの対立項が示されていて、短さの中で強固な世界観を構築しています。

■兼題部門 優秀賞

□かたつむりの唄   穂坂コウジ

 童話としてのお伽話。ひらがなとカタカナを多用した演出が、お話の柔らかさを引き立てていて見事です。そしてそこからちょっとギョッとしてしまう、鳥登場の展開へ続くところもギャップが際立っていてよいです。さらにその展開からまた柔らかい雰囲気の結末に結びつくというストーリーの捻り方が超短編的だな、と感じました。

□御伽噺集   五十嵐彪太

 多重に織り込まれた物語の鍵としてのお伽話。好みのお話で、すごく私を狙い撃ちされているような気がします。解読できない文字の本がある体験を通して読めるようになる、というドラマティックなものをこの文字数でやってしまうところに超短編としての面白さを感じます。

□神々のかたり   なな

 昔話としてのお伽話。ひらがなが多用されていて柔らかさの演出が効いています。そして、その柔らかさと会話の殺伐とした内容にギャップがあり、これも超短編的な面白さの一つに思いました。せっかく短くまとめられているのだから、会話のみで成立させていたらまた違った面白さもあったかもしれません。

■兼題部門 佳作

□坊の木枯らし   といじま

子供に伝える物語としてのお伽話。伽の意味に触れているので好ましいです。病気を「木枯らし」と比喩にして物語に登場させているところもよいと思います。ただ、やや言い回しがまどろっこしく感じられます。もっと文章をシェイプさせてもよかったのでは、という気がします。

□イかロ   茶林小一

 夢物語としてのお伽話。最近バズっていたネタも使って社会への問題提起を行う技は見事です。個人的な好みとしては、直接的なものよりも比喩を使ったもののほうが好きです。選択肢が二つなのは、とは一瞬思いましたが、二つでも機会が増えれば行き着く先は多様だろうなと思え、納得させられました。

■兼題部門 そのほかの作品

□私は女神   紙男

 昔話としてのお伽話。「金の斧」のパロディとして説得力のあるものになっています。ただ、パロディであることで終わってしまっているかな、という点で「超短編としての飛躍」みたいなものが弱いかな、と感じました。

□欲望   斜線

 残酷なお話としてのお伽話。ハードボイルド感も漂うお話です。やりたいことの意図はわかるのですが、そのためには没入感が必要になると思われます。となると句読点の打ち方を含め、文体がミスマッチかなあと感じます。最後のカタカナ表記の部分は、カタカナになっていることで軽くなってしまっているような気がします。

□お伽話   松岡永子

 伝承としてのお伽話。短めの文字数の削った描写がいくつもの解釈を許していて超短編的な面白さがあると感じられました。さらっと読むとファンタジーに見えますがSFとも読めます。一切描写されていない語り手についていろいろ考えを巡らせるととても面白いです。

□クニオの冒険   海音寺ジョー

 夜のお話としてのお伽話。介護のリアリティに基づいたお話なのですが、端々に「クニオ」に対する悪意が感じられ、演出だったら見事なのですが、それ必要かなあという情報の仄めかしも含め、わりと悪意そのもので書かれたように思えてしまいます。文章もややぎこちなく感じました。

□お伽の国のあれやこれ   ぽっこり雛豆

 バックグラウンドとしてのお伽話。韻も踏まれていて歌のようです。警句のようにも読めますが、詩ではないような気がします。優しいことが易しく優しい言葉で紡がれていますが、並べて形を整えただけに見え、超短編としての面白さはあまり感じられません。形を整えたという点では気を使っていることは伝わってきます。

□眠れない君のために   空虹桜

 就寝時に伝えるお話としてのお伽話。伽の意味ですね、好ましいです。語り手が物語を書こうとする点は面白いですが、この内容ならもっと文章をシェイプできたように思います。リフレインの多用は、このお話の場合だとしつこさになってしまっています。ストーカー的恐怖を演出しているわけでもないようなのでもっと軽やかだったらなあと思います。

□不眠の国   春名トモコ

 童話としての、また眠りに関するお伽話。伽の意味に真摯で好ましいです。童話の形をとっているのに使われている言葉がわりと軽い(軽やか、ではなく)のでミスマッチに思えます。丁寧に仕上げたら輝くお話だと思えたので、もっと推敲に気を使うと良いのではないでしょうか。

□ワールド・レコード   はやみかつとし

 寓話としてのお伽話。時事風刺的なものが取り上げられていて面白いなとは思うのですが、単語のチョイスが若干古臭いというか、若いフリをしているように読めるというか、そんなことを考えました。枠に納めました感があるので、もう少しストーリーにドライブを効かせてもよかったかもしれません。1段から2段、2段から3段への飛躍は巧みでよいと思いました。あとこれ完全に余談なのですが、3段でSKOOPというアーティストの2ndアルバムを思い出しました。

□つづき   佐多椋

眠りについての童話としてのお伽話。括弧括りの文で最初と最後を括るのは面白いと思いました。ストーリーよりも場面を描きたいのだろうな、と感じられます。瞬間を切り取る超短編的な技に感じました。細かく描写された動きに「お姫さま」という柔らかい主語がブレーキをかけているように読めました。もう少し勢いを大事に単語を選んでもよかったのかもしれません。


■自由題部門 最優秀賞

□歌う鳥   凪野基

 絶望からの反転するストーリー運びとディティールの細かさ、お見事です。その道の専門家(であるべき人たち)からも理解されなかった苦しさが、一つのきっかけによって生きてゆくための手段となるのは、とても希望溢れる物語です。そのきっかけも、ただ偶然出会ったのではなく、主人公の試行錯誤の上で、というのがまた救われます。幸あれ。

■自由題部門 優秀賞

□ちるちるみちる   なな

 場面が丁寧に描写されています。お話としては花びらを拾い上げてまた捨てるだけで、それだけになってしまう可能性がありますが、ひらがなが多用されており、また桜の「花びら」という淡い色を連想させる言葉が繰り返され、見た目に美しい印象となっています。言葉に対して丁寧な印象を受けます。どこか艶っぽさもあり、絵画を鑑賞するときのような静かな力強さを感じました。

□花はどこへ行ったの   穂坂コウジ

 ファンタジックなお話かと思って読み進めていて、おばけの哀しみが描かれていました。「おばけ」というとぼけた字面の主人公、「青い鳥」というどこか寓話的なモチーフ、合せると穏やかな童話になりそうなのに、これは酸いも甘いも知った大人向けのお話ですね。淡々とした文体も、よく調和していると思います。

■自由題部門 そのほかの作品

□たとえばこんな空回り   海音寺ジョー

 前半、細かなディティールがお話に説得力を持たせていてとてもよかったです。つらさも理不尽も、納得というか腑に落ちる感じで地に足がついた文章だと思いました。反面、後半に行くと長い説明の台詞でまとめられていて、強引さを感じました。お話として語られている問題は現実味があるので、後半にも前半と同じくらい気を使うと強い作品になったと思います。

□ひめくり   田中目八

 段の接続での飛躍は超短編的で面白いと感じました。なるほど、ひめくり。擬古文を用いて書かれていることが雰囲気づくりのみにしか作用していないことが気になりました。お話としてはわりとあっさりしたストーリー運びではあるので、装飾したい気持ちもわかりますが。

□胃   田中目八

 擬古文が自然に用いられていて、語り手のひととなりを想像させます。物語に強度を与える効果的な演出だと感じられました。暗喩が込められていることは推測できるのですが、うーん読み切れず。ただ、そういう「わかるようなわからないような」の微妙なラインを攻められることは超短編を読むときの楽しみのひとつだと思っているので、挑戦的で好感を持ちます。

以上。

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