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2019年4月 9日 (火)

【発表】サウンド超短編

■■「サウンド超短編」結果発表。(たなかなつみとタカスギシンタロの選評が、この記事の最後にあります)

  • 最優秀作品賞 Go to the dogs 五十嵐彪太
  • たなかなつみ賞 コントラプンクト はやみかつとし
  • 松本楽志賞 往生伝 立花腑楽
  • 峯岸可弥賞 Go to the dogs 五十嵐彪太
  • タカスギシンタロ賞 Go to the dogs 五十嵐彪太
  • シライシケン賞(2作品) 往生伝 立花腑楽/Louder Than War 穂坂コウジ

※「Go to the dogs 」と「往生伝 」は同点でしたが、◎が多かった「Go to the dogs 」を最優秀作品としました。


■■選評(◎=最優秀作品・○=優秀作品・△=佳作)

■たなかなつみ評

○往生伝   立花腑楽
>  人いきれと濃密な祈りの気配が混ざり合い、薄暗い堂内は異様に熱っぽい。

課題曲を BGM にして読んだときに、とんでもなく気持ち良い! と感じた作品でした。流れ続けている誦経の金属質な声や泣き声がどんどん高まって加速して、場の空気が熱くなっていく情景が、読めば読むほど、丁寧に課題曲を下敷きにした物語になっていると思えました。読んでいるときの気持ち良さではいちばんでした。熱くなりました。


△明けない夜   空虹桜
>  もちろん比喩。

まず、出だしでやられました。そこから読み進めるのを躊躇して、タイトルとのあいだを何度も往復してしまいました。二段落目は文章が凝っていて面白い。言葉のもつ意味の前提が提示されひっくり返されが繰り返されるのを味わって、それからまた一文目に戻って、うん、と頷いたり。楽しく読みました。三段落目から具体的に「死」が語られていき、流れとしては納得だったのですが、そこまでのトリッキーな表現からはちょっとトーンダウンしてしまった印象はどうしてもありました。最後の「踊る」部分は、課題曲の雰囲気にとても合っていて、なるほど、ここにつながる話なのかと、こういうお題処理の方法も面白いと思いました。結末が先にあったのであれば、どのような流れで冒頭文が生まれたのか、お聞きしてみたいです。


○ ITERATE   佐多椋
>  晴天のなか、雪原を歩いていた。どこに向かっているのか、何のために歩いている

丁寧な描写なのにその情景の印象が課題曲とずれがあるように感じた序盤だったのですが、「ひかり」の描写が始まったときに、音が光の瞬きとして描写されているのに気づき、感嘆しました。光のちかちかと天候の激しい変化とそれにともなう主人公の変化に、読んでいるわたしも惑わされたままエンディングに辿り着きました。楽しそうで怪しげな課題曲の雰囲気が巧く文章に反映した作品だったと思います。


○ 曲解   加楽幽明
> これからお聞きいただくのは、先月、二十八歳の若さで夭逝した作曲家ディモンズ・

音がお題の超短編作品としてのアプローチ方法としては王道のひとつかなと思うのですが、読まされました。その形式に合った雰囲気のある文章も読み進めやすくて良かったです。この作品には、都合上、タイトルがふたつあるのが面白いのではないかと思います。しかも、作品自体のタイトルが「曲解」なので、どうしても単なる曲紹介におさまらない意味を探ろうとしてしまう。読み手を振り回そうという意図がおありだったのであれば、うまくはまっているのではないかと思います。


◎コントラプンクト   はやみかつとし
>  音の個体発生と音の系統発生と音の個体発生と音の系統発生と音の個体発生。音は

どうぞ存分に最優秀賞を攫っていっちゃってください、という気分にさせられた作品でした。まず、この作品自体が意識的な音でできあがっていること、そして、その音が確かに課題曲からイメージさせられるものであること、それから、語られている内容自体が課題曲をイメージさせるものであること、さらに、課題曲が奏でる音が作品の文章から動きのある絵として喚起させられるものであること。あの課題曲からこういう組み上げ方の作品が作れるのかと、目を開かされたように思いました。一段落目なんて繰り返しがあるばかりなのに。タイトルがもうずるいし。「k」音、「k」音、「k」音……で最後盛り上がって、「ko」で締めだし。洗練されすぎていませんか。この作品が朗読されるとどんなふうになるのか、お聞きしてみたいです。


△ 告知   松岡永子
>  今夕。月が昇ったら、この地の新しい主が決まる。

物語としてはとても好きです。息づく自然の絶える様を導入として、それに取って代わった人工物による新しい「自然」の情景を描写して、「止まった」と思われる世界が最後に動的に動いて期待を高まらせて終わる。その構造も、それぞれを描写する文章も、話自体も、とても良いと思いました。ただ、これは完全にわたしの感じ方の問題だと思うので申し訳ないのですが、課題曲からわたしが得たイメージとは開きのある話のように思いました。どうしようかかなり迷ったのですが、優秀作としては推しませんでした。でも、とても面白く読んだことはお伝えしたかったので、佳作に挙げさせてください。


△ 球体   gげんせい
> ぽん!と音が鳴る。空中に現れた小さな球体。ポン!と音が鳴る。柔らかそうな、真

ものすごくストレートに課題曲を文章にする挑戦をされた作品だと思います。音の粒自体がまさに「球体」で「ぽーんポポン」で表現されていると思いますし、曲の持つ怪しげな印象が「ドクロ」というのも、なるほど、と思わされますし、どこかしらコミカルな感じもあちらこちらにちらばめてあって、すごく楽しく読みました。

■タカスギシンタロ評

 「音楽を聴いてイメージした物語を書く」というお題はなかなかむずかしいものだったと思います。しかし読んでみるとどの作品も音と良く合っており、雰囲気をつかんでいてすごいと思いました。音から醸し出される不安感や未来的な雰囲気からか、英語やカタカナのタイトルが多かったことが興味深いです。

△Louder Than War   穂坂コウジ
> 人間の生みだす騒音の中で、およそ戦争ほどうるさいものはない。

 兵器と音楽的事物との対比が続く前半だけなら佳作には選ばなかったと思いますが、ラストに立ち上る煙をマイクロフォンに見立てたことで一気にメッセージ性が立ち上がり、すばらしい作品になりました。

◎Go to the dogs   五十嵐彪太
> 犬は悩んでいる。ありったけの語彙を使い、悩みを説明しているのだが、

 投稿作全体を見渡すと、どれもうまくお題の音の「不安感」や「未知との遭遇感」を処理しているのですが、この作品はそのさらに上を行っています。登場人物(?)を犬にすることで、哲学的な悩みをユーモラスな雰囲気の中で、嫌みなく受け止めることができました。アバンギャルドな絵本を読んでいるかのようなふしぎなテイストの作品です。

○往生伝   立花腑楽
> 人いきれと濃密な祈りの気配が混ざり合い、薄暗い堂内は異様に熱っぽい。

 お題の曲との雰囲気のマッチングは投稿作で一番でした。後半に向けて加速する盛り上がりも音楽的。

○明けない夜   空虹桜
> もちろん比喩。

 絶望や恐怖をあきらめへと昇華させるやりきれない終末感。それでも音楽の力で踊り続けようというメッセージ性がすばらしい。

△ITERATE   佐多椋
> 晴天のなか、雪原を歩いていた。

 日々の営みのくり返しを、音楽における繰り返しのイメージとうまく重ねていると思いました。

○告知   松岡永子
> 今夕。月が昇ったら、この地の新しい主が決まる。

 お題の曲の未来的でありながらどこか退廃的な雰囲気を、プラスチックの廃棄物を題材にすることで見事に表現しています。

△球体   gげんせい
> ぽん!と音が鳴る。空中に現れた小さな球体。

 詩的で音楽的な作品。オノマトペの多用で、お題の曲に合わせて朗読したら間違いなく面白い作品。


以上です。
たくさんのご投稿ありがとうございました。


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