「珈琲の超短編」受賞作品を発表します(松本楽志賞に関しては後日発表予定)。
■■各賞
■井上雅彦賞(大賞):
『神様』 五十嵐彪太
■峯岸可弥賞:
『豆を轢く』 宮田真司
■タカスギシンタロ賞:
『Hello, world』 立花腑楽
■優秀作品賞:
『射手辺の遠眼鏡』 アオツリ
■■佳作
『コウヒ』 春名トモコ
『魔法使いの珈琲 』 たなかなつみ
『奇跡』 元木一人
『トカゲ』 末埼鳩
『喫茶リバーサイド』 タキガワ
たくさんのご投稿ありがとうごさいました。
※各作者の作品掲載ページにリンクを張らせていただきます。ご希望の方はタカスギまで。
■■選評
■井上雅彦
濃厚な四杯の滋味を、堪能させて戴きました。
冷静なテイスティングというよりも、心を躍らすそれぞれの杯を味わう体験は、個性の際だった花火を飲み干すような興奮に満ちたもので、どうやら今夜は眠れそうもありません。
たった一杯を選ぶことなどできようはずもない逸品たちからひとつを選ばなければならない場合、私は自分の感性から遠いところにあるものに注視します。私はいつも、これまで味わったことのない魅惑を探していています。しかし、それすら、この四作は、しっかりと持ち合わせています。「豆を轢く」の切実なテーマと端正な技法の切れ味。「射手辺の遠眼鏡」の奇妙なドラマ性と緊張感。「Hello, world」の魔術的なイメージの鮮やかさ。そのなかにおいても、じわじわと異質な薫香を放つ「神様」を、今回、私は選ばせていただきました。
「神様」はどことなく童話風の(あるいは民話的な)長閑な語り口なのですが、なんともいえない怕さがあるのです。生命を「美味」に変える行為への根源的な原初的な「怕さ」ではないか……などと、考えさせておいて、ぬけぬけとしたラストのこの一行。甘さも苦さも爽やかさもコクもある重奏的な一杯だと思います。
もっとも……この評価は、私が個人的に珈琲を淹れる際、最も惹きつけられる行程――〈焙煎〉をモチーフにしていることによるものかもしれません。それほど、この四作は比較のしようもない、いずれ劣らぬ強い魅力を持っています。読みかえすたびにそれぞれの後味が、他の作品を際立たせ、思いもかけないブレンドとなって、心の中で響き合う。
そんなことを感じることができるのも、一篇一篇がデミタスのように濃厚な《超短篇》ならではのことなのだろう、と私は思います。
■峯岸可弥
峯岸可弥賞:『豆を轢く』 宮田真司
珈琲豆が生産され人々に行き渡るまでを「苦さ」という軸で描かれ、世界の理不尽さが浮かび上がる。
この作品を読んだ方には『おいしいコーヒーの真実』というドキュメント映画を観て貰いたい。
■タカスギシンタロ
タカスギシンタロ賞:『Hello, world』 立花腑楽
コーヒーを異世界への入り口として捉えた作品がいくつかありましたが、本作はその中でも世界観の構築がすばらしかった。「天現寺流」「黒豹珈琲」などの固有名詞が、独特の魔術世界を感じさせる小道具として、うまく機能していたと思います。
ストーリーは狸や黒豹を触媒としたコーヒーの怪しげな世界から「Hello, world」のひとことで一気にデジタル世界へと飛躍。魔法の世界が現代へと接続するそのスピード感も見事です。
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